臼蓋形成不全の問題について
臼蓋形成不全というと、まずレントゲンで「臼蓋の形がどうなっているか」を見る。
もちろん、それは大切なことです。
実際に骨の形そのものに左右差がある人もいますし、生まれつきの形態的な違いもあります。
X-Rayは、骨そのものを見るものです。
それは間違いではありません。
ただ、X-Rayで分かるのは、あくまで骨の形や関節の位置関係です。
そこに、筋肉がどのように作用して関節を動かしているのか、実際の動作の中でどこに衝撃や荷重が集中しているのかまでは写りません。
私は、ここが重要だと考えています。
骨の形を見ることと、
その骨を身体がどう使っているのかを見ることは、別の話です。
そして私がもっと気になるのは、その先です。
その股関節を、その人が普段どのように使っているのか。
股関節は、どの方向で使われているのか
臼蓋形成不全の方を実際にみていると、股関節を外旋方向に使うことが強くなっている人がいます。
もちろん、外旋すること自体が悪いわけではありません。
股関節には内旋も外旋も必要です。
問題は、外旋方向に偏りすぎて、その状態で固まってしまうことです。
股関節が外旋した状態では、股関節から曲がりにくくなります。
反対に、股関節が内旋方向になると、股関節から曲がりやすくなります。
これは、この話を考えるうえで非常に重要なところです。
股関節が外旋したまま固まっていると、身体を股関節から折りたたむような動きがしにくくなる。
すると、股関節から曲がる代わりに、骨盤や腰を動かして身体を逃がすようになります。
骨盤は後傾しやすくなり、踵に体重が乗りやすくなる。
さらに足底では外側に荷重が逃げやすくなる。
私の見方では、
外旋過多
→ 股関節から曲がりにくい
→ 骨盤が後傾しやすい
→ 踵・足の外側に荷重が偏りやすい
という流れが起こります。
では、逆に内旋を取り戻すと、どうなるのでしょうか。
内旋を取り戻すと、何が変わるのか
まず、今まで動かなかった股関節を、内旋方向へ少し動かしてみる。
すると、股関節から曲がりやすくなる。
股関節から曲がれるようになると、骨盤も前傾方向へ動きやすくなる。
すると、身体を後ろに逃がすような動きが減り、重心も前へ移しやすくなる。
足底の荷重も変わってきます。
これまで踵や足の外側に偏っていた荷重が、前方へ移りやすくなる。
つまり、
内旋を取り戻す
→ 股関節から曲がりやすくなる
→ 骨盤が前傾しやすくなる
→ 重心を前へ移しやすくなる
→ 踵・足の外側への偏った荷重が変わってくる
という変化が起こります。
ここが面白いところです。
股関節の骨の形は、何も変わっていません。
それでも、股関節の動く方向が少し変わるだけで、骨盤の動きも、足の荷重も、身体全体の使い方も変わってくる。
だから私は、骨の形だけを見て終わらせたくないのです。
お尻の筋肉が使えるようになる
そして、ここで重要なのがお尻の筋肉です。
股関節には、本来、非常に強いお尻の筋肉があります。
ところが、股関節からきちんと曲がれなくなっていると、その筋肉を十分に使えなくなる。
ここは「お尻の筋肉が弱い」と考えるだけでは、少し違うのではないかと思います。
筋肉が弱いのではなく、筋肉を使える状態になっていない。
股関節が外旋方向に偏り、股関節から曲がりにくい。
すると、本来なら股関節を支え、身体を受け止めるはずのお尻の筋肉が働きにくくなる。
逆に、内旋を取り戻して股関節から曲がれるようになれば、お尻の筋肉を使える条件ができてくる。
だから、
「お尻を鍛えればいい」のではなく、その前に「お尻を使える股関節にする」。
私はそう考えています。
大きな衝撃を、どこで受けるのか
この問題は、普段の歩行だけではありません。
例えば、山の下り坂を歩く。
あるいは段差を下りる。
こうした大きな衝撃を受ける場面では、脹脛だけで衝撃を吸収するわけではありません。
特に踵から入った衝撃に対しては、股関節を曲げながら、お尻の筋肉を使って身体を受け止めることが重要になります。
身体を少し沈ませながら、股関節周囲の筋肉を使って衝撃を受ける。
これができれば、入ってきた衝撃を身体全体で受け止めることができます。
ところが、股関節が外旋過多で、そもそも股関節から曲がりにくくなっている。
すると、本来使えるはずのお尻の筋肉を十分に使えない。
逆に、内旋を取り戻して股関節から曲がれるようになれば、衝撃を受けたときにも股関節を使って身体を沈め、お尻の筋肉を使いやすくなる。
つまり、
内旋を取り戻すことは、単に股関節の動きを増やすことではありません。
身体を受け止めるための、股関節の使い方そのものを変えることにつながります。
そして、こうした実際の荷重の集中は、X-Rayを撮っただけでは分かりません。
骨の形を見ることと、その骨に実際どのような力が繰り返しかかっているのかを見ることは別なのです。
では、なぜ内旋ができなくなるのか
ここで腸腰筋の緊張が気になります。
臼蓋形成不全の方をみていると、腸骨筋や大腰筋がかなり緊張していることがあります。
そこで、その緊張を少し落としてみる。
すると、股関節が動きやすくなったり、痛みが変化したりすることがあります。
骨の形は変わっていません。
それなのに身体の状態が変わる。
では、何が変わったのでしょう。
そこで、まず内旋を少し出してみる。
いきなり大きく動かす必要はありません。
今まで動かなかった方向を、ほんの少し動かしてみる。
そして、それを患者さん自身に動かしてもらう。
すると、股関節を内旋方向に動かすことで骨盤が前傾しやすくなり、股関節から曲がりやすくなる。
すると、今まで使いにくかったお尻の筋肉も使いやすくなる。
ここがポイントです。
「お尻を鍛えればいい」のではなく、その前に「お尻を使える股関節にする」。
私はそう考えています。
内旋を取り戻すことで、身体の使い方が変わる
まず、これまでできなかった内旋を出せるようにする。
そして、その内旋方向の力を自分で出せるようにしていく。
さらに、股関節を内旋させた状態で外転させる。
すると、骨盤の動きも変わってくる。
足底の外側に偏っていた荷重も変わってくる。
重心も前方へ移動しやすくなる。
つまり、股関節だけを見ているのではなく、
足 → 膝 → 股関節 → 骨盤
という身体全体の荷重の流れが変わってくるわけです。
ここで初めて、股関節を「どう使うか」という話が、実際の身体の動きとしてつながってきます。
骨の形だけで話を終わらせていいのか
ここで大切なのは、
「臼蓋形成不全は存在しない」
と言いたいわけではありません。
骨の形に問題がある人はいます。
ただ、
「骨の形がこうだから、この痛みが出ている」
と、そこで話を終わらせてしまっていいのか。
私はそこを考えたいのです。
骨の形を見る。
レントゲンを見る。
それは必要です。
でも、その次に、
「この人は、その股関節をどう使っているのか?」
を見る。
そして、
「本来使えるお尻の筋肉を、本当に使える状態なのか?」
を見る。
さらに、
「内旋と外旋を必要に応じて使い分けられているのか?」
を見る。
実際に身体を触り、動かし、少し条件を変えてみる。
それで痛みや動きが変わるのであれば、少なくとも現在の状態には、骨の形だけでは説明できない要素があると考えることができます。
外旋が悪いわけではない
最後に、ここは誤解のないようにしておきたいところです。
外旋が悪いわけではありません。
内旋だけが正しいわけでもありません。
股関節は、内旋も外旋も使います。
歩くときも、身体を支えるときも、衝撃を受けるときも、その場面に応じて両方を使い分けます。
問題なのは、
外旋過多になって、内旋側へ戻れなくなること。
だから、まず内旋を取り戻す。
臨床では、それだけで大きな変化が出ることがあります。
そして最終的には、
内旋も外旋も必要なときに使える。
その両方を自分でコントロールできる。
これが本来の身体の使い方なのだと思います。
「外旋をやめる」のではありません。
外旋だけにならない身体にする。
私は、臼蓋形成不全の問題を考えるとき、骨の形だけではなく、そこまで見ていきたいのです。
では、実際に股関節をどう動かせばいいのか?に続きます。



